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てんかん・発作について

病気の知識




こんにちは。アニマル医療センター 桃ペットクリニックの院長の加藤です。皆様は節電の夏はいかがでしたか?節電で家計も助かるし、このままエコが定着すると良いですね。時々役所に行くと、真昼間なのに蛍光灯が煌々と全部付いていたりするのを見ると、「やっぱり所詮他人事なのかな?」と感じちゃいます。役所の光熱費を公務員の給料から引いたら本気で節約しだすのでしょうか?
 今回は読者アンケートで『てんかん』について教えて欲しいとの要望がありましたので、『てんかん』の中でも原因不明で起こる『特発性てんかん』についてお話します。


【てんかんとは?】

『特発性てんかん』とは内臓や心臓等には異常が無く、脳内部の電気信号の乱れが原因で引き起こされる発作です。電気信号の乱れが起こる原因はCTやMRI検査で発見できる例も有りますが、原因が生前には分からず、死後の解剖で発見される事もあります。
 脳に異常がある『てんかん』も簡単に説明しますと、脳腫瘍・水頭症・ジステンパーウイルス等の感染症等があります。脳腫瘍は脳のガンで、乳がん等が転移して起こったりもします。水頭症とは脳内に水が溜まる病気で、チワワに多い病気です。ジステンパーウイルス等の感染症は、子供の頃感染して治ったとしても、脳内部に障害を残して後々てんかんを起こす事があります。脳の異常以外にもてんかんの様な神経症状を引き起こす原因は色々あり、肝臓・腎蔵の異常、心臓の異常、糖尿病、低血糖、薬物中毒等々があります。肝臓・腎蔵は体内の毒素を処理する臓器なので、ここが壊れると毒素が体内を回り中毒のような状態になります。心不全になると酸欠や貧血の様な状態になりフラフラしたり、失神する事もあります。糖尿病は重度の高血糖になるとけいれんや意識障害を起こす事があります。低血糖になるとぼーっとしたり、ふらふらになったり意識障害を起こす事があります。薬物中毒は薬の種類によってはけいれんしたり失神したりします。


【てんかん・発作の症状】

症状は程度や種類も様々で、失神する・よだれをたらす・目が振動する・視点が合わない・ヨロヨロする・体が硬直する・体の一部がけいれんする・全身がけいれんする・嘔吐・呼吸困難等です。一生で一回だけの事もありますし、一年に一回~数回~頻発の事もあります。また、だんだん間隔が短くなったり、程度がひどくなる場合もあります。実際に発作が起こっているピークは数秒~数分の事が多いですが、飼い主としては長い時間に感じる事が多いようです。前兆や後遺症がある場合もあり、トータルでは数日の事もあります。前兆としては、不安げにウロウロしたり、口をペチャペチャしたりする事もあります。体の一部がピクピクして、波が拡がるように全身にけいれんが拡がる事もあります。後遺症としては、一時的に視力や聴力が落ちたり、体が麻痺したり、まっすぐ歩けなくなったりする事もありますが、大抵は数日で元に戻ります。<


【対策】

基本的に1回の発作だけでは治療をしませんが、まずは血液検査や心電図等で内臓に異常がないかを確認します(ペットの場合はCTやMRIの検査をするのにも全身麻酔が必要になるので、経過観察後よほどひどい場合や、脳腫瘍の疑いが強い場合意外は行う事は少ないです)。頻繁に発作が起こる場合は投薬を開始します。しばらく投薬を続けた後、血液中の薬の濃度を測定し目標濃度に達しているか確認します。てんかんを抑える薬は用量の調節が難しく、少なすぎると発作を抑えきれず、多すぎるとフラフラになったり(酔っ払ったようになったり、意識がぼーっとしたり)、反対に興奮状態になったりする事もあります。また、一種類の薬で抑えきれない場合は他の薬と併用する事が必要になる事もあります。投薬を続けると体の中で薬を分解して効きが悪くなる事があります。すると発作が再発しだすので、血液中の薬の濃度を測定し、低下しているならば薬を増量しないといけません。定期的に血液中の薬の濃度を測定して、投薬量を調節するのが理想的です。
 薬で完全に発作を抑える事が出来ない場合も、軽い発作が起こる程度なら薬の増量や併用をせずに経過を観察する事もあります。飼い主も最初はてんかん発作にビックリしますが、何度も経験したり説明を受けたりする事で慣れてきます。てんかんがどのようなタイミングで起こるかはケースバイケースですが、金属的な大きな音やフラッシュのような強い光等の急な刺激が引き金になる事があります。発作が起こったときは薄暗く静かにして、飼い主も落ち着く事が大切です。昔、夜間診療時代にあった例では、けいれんしたペットが運ばれてきて、私がどのようなけいれんなのか観察している間も、飼い主が泣き喚き「一刻も早くけいれんを止めて欲しい!!」とパニックになっている人がいました。以前から何回も発作を起こしていたそうですが、全く発作に慣れていない人でした。飼い主が大騒ぎでは落ち着く物も落ち着きません。他の病院にかかっていたようでその後来院することはありませんでしたが、獣医師から的確な説明を受けていなかったのかもしれません。どんな病気でもそうですが、まずは飼い主が冷静になる事が一番重要です。


全体的なまとめ

てんかんは日常の診察で良く遭遇する病気です。薬も長期間投与する事になる場合がありますが、的確に治療をしていけば発作を抑える事は十分可能ですし、副作用の心配も大きくはありません。完治だけが治療ではありませんし、病気と上手に付き合っていくという感覚も大事です。我が家の犬もてんかん持ちですが、少量の薬の投与で発作をコントロールしています。発作を見てパニックを起こすかわいそうな飼い主にならないように、獣医師とよく相談をして治療計画を立てることが重要でしょう。

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