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ワクチン、狂犬病の害について

病気の知識





明けましておめでとうございます。アニマル医療センター 桃ペットクリニックの院長の加藤です。冬休みや正月で普段と生活サイクルが変わったご家庭も多いかと思いますが、ペットにとってはストレスになっている事が多いようです。特に高齢ペットは正月明けに体調を崩す事が多いので要注意です。騒いで楽しいのは人間だけで、ペット達は迷惑しているのかもしれませんよ。当院は忘年会や新年会は全く行わないので、年末年始も普段と何も変わりませんが・・・。今回はアンケートで「ワクチン、狂犬病ワクチンの害について取り上げてほしい」との要望がありましたのでお答えします。


【ワクチン、狂犬病ワクチンの害とは?】

最近も人間の予防接種で死亡例が出ましたが、ペットでもワクチンの副作用による死亡や後遺症の危険性はゼロではありません。基本的に接種後数分~数時間で起こる副作用で生死に関わる物は、アナフィラキシーショックと言って、花粉症や食べ物アレルギーのようなアレルギー反応の激しいバージョンです。症状としては「かゆみ・顔や体の腫れ・呼吸困難・虚脱」等様々ですが、程度がひどい場合には心停止で死亡する事も十分考えられます。食べ物アレルギーで卵や蕎麦のようなほとんどの人には問題無い食べ物でも、呼吸困難や心停止を起こす人もいるのと同じです。ワクチンの副作用が出る可能性は全てのペットにあり、前回大丈夫だったから今回も大丈夫という保障はありません(花粉症が去年までは大丈夫だった人が、ある日突然くしゃみをし出すのと似ています)。体調も関係なく、年齢も関係ありません。他にも脳炎や神経障害等が起こる可能性もありますが、ペットのワクチンではほぼゼロと言って良いです(当院も10年以上開業していますが、今のところゼロです)。ワクチンの成分が一種類の狂犬病でも数種類の混合ワクチンでも、副作用の発生リスクに大差は無く、当院の例では2011年に狂犬病接種で副作用が一例出ました。また、ワクチンを接種する際には飼い主に副作用が出る可能性があることを必ず伝え、万が一副作用が出た場合を考えて、予約の段階で午前中に接種することを勧めています(もし、遅い時間に接種して夜間に副作用が出れば夜間救急へ駆け込む事になるので)。また、獣医師もワクチン接種をする際は、副作用が出る事を想定して行っています。病院内にも副作用が出た場合の対応準備を常にしてありますので、副作用が出た場合でも迅速に対応できるようになっています。アナフィラキシーショックが出た場合は、100%助かるなどと豪語は出来ませんが、迅速に対応すれば99.9….%助ける事は出来ます。アナフィラキシーショックはワクチン以外の薬や食べ物でも起こる可能性があり、抗生剤や麻酔剤のような日常的に使用する治療薬でも起こる事はあります。生物には必ず例外や特異体質が存在するので、副作用等の想定外な事態が起こらないようにすることは不可能です。重要なのは起きても対処できるように医療側が備えておく事です。


【狂犬病ワクチンについて】

狂犬病予防法では、狂犬病ワクチンは一年に一回接種し、保健所に登録をする事を飼い主に義務付けています。また、飼い主は注射済票を犬につけておく事も義務化しています。厳しい決まりのようにも感じますが、1950年以前の日本国内では多くの犬や人間が狂犬病に感染し死亡していたことをふまえ、狂犬病予防法の施行後、狂犬病を撲滅する事ができた事を考慮すると仕方の無い事だと思います。世界的には現在でも年間数万人が狂犬病で死亡しており、日本で狂犬病が再度広がれば犬の散歩も気軽に出来なくなるでしょうし、今以上に野良犬の駆除を行なうようになるでしょう。「アメリカではワクチンは数年に一回接種しているから日本は接種しすぎだ」とか「必要ない」とか無責任な意見も聞かれますが、アメリカのような広い国を一くくりにしてしまうのは非常に乱暴な発想です。テキサスの田舎もニューヨークの都会も同じアメリカですがウイルスの汚染状況もペットの飼い方も周辺動物の環境も全く違うでしょう。名古屋近辺でも、少し距離が離れただけで病気や感染症の発生率も違ってきます。また、狂犬病も撲滅できていない国の状況を日本に当てはめる理由はありません。日本より浄化された国の例ならば真似する意義もあるでしょうが、わざわざ汚染国を真似る必要はありません。ペットの安楽死に対する考え方も、ペットに対する考え方も日本とは異なる国です。病気になった場合に最後まで治療し付き添い看取るのか、手っ取り早く安楽死をするのか・・・?
責任ある立場の人が、本当に日本でもワクチンは数年に一度で良いと主張する場合は、正確なデータを取って、学会で発表し、他の研究者の批判や評価を受け、確実な情報として世に発信します。しかし、無責任な事を言う人は資格も免許も無い人なので、思いつきや偏った情報でもっともらしい事を言うので要注意です。「論文でこんな意見がある!」などといかにも権威者の意見のように表現しているのも見かけますが、学会や論文発表のシステムを知らない人なのかな?と感じます。iPS細胞でもニセ学者のような問題がありましたが、根拠の無い適当なデータを学会で発表するのも自由ですし、論文を発表するのも自由です。その後ウソだとバレるだけで・・・。


【狂犬病以外のワクチンについて】

狂犬病以外のワクチンは、ジステンパーやパルボウイルス、猫エイズや猫白血病のように感染したら非常に重大な病気の予防が出来ます。以前は一度感染したウイルスに対しては免疫ができるから再度感染はしないと言われていましたが、現実には人間界でもBCG(結核を予防するためのワクチン)を接種していたにもかかわらず、若者の間で結核が流行したりと、未だに免疫システムは不明な部分もあります。免疫は時間が経てば薄れてくるので、再度ワクチンを接種して免疫を高めておくと本当のウイルスに感染した時に体内ですぐに免疫力が働きウイルスに対処できるのです。接種間隔は日本では一年毎が推奨されていますが、最終的には飼い主がリスクを理解したうえで、メリットとデメリットを天秤にかけて、メリットの方が多いと判断するならば行えば良いと思います。当院ではパルボウイルス感染症が時々来院します。仔犬は致死的になる場合も有りますが、成犬では血便や下痢を起こしますが死亡する事は稀です。これを「下痢や血便程度ならいいや」と考えるか、「下痢も血便も起こして欲しくない」と考えるかは飼い主次第です。


全体的なまとめ

インターネットでも「ワクチン接種は獣医の金儲け」のような意見もありますが、経営的な面では数千円のワクチンで健康体でいられるより、病気になって検査・入院・治療をした方が獣医さんは儲かるでしょう。フィラリア予防も一ヶ月数百円で健康体でいられるより、心臓病や肝臓病になって、腹水が溜まった方が獣医さんは儲かるでしょう。でも、ほとんどの獣医はペットが病気になる事より健康でいる事を望んでいます。特にいつも診察しているペットやその飼い主には愛着も湧きますし、ドライにビジネスと捕らえてる獣医は私の周囲にはいません。獣医は最低でも大学で6年間勉強して、そこそこ難しい国家試験に合格しないと貰えない国家免許の独占業種ですから真面目に仕事をしていれば、そんなせこく儲けなくても食うには困らないのですよ。

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