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犬の発情期について

病気の知識




こんにちは。アニマル医療センター 桃ペットクリニック 院長の加藤です。新しい出会いの季節の春も終わり、今度は開放的な夏が来ますね。夏が終わればなんとなく人恋しい秋が来て、秋が終われば一人じゃ寂しいクリスマス・バレンタインと・・・。こう見ると人間って、一年中発情している生き物なんですね。だからこそ、こんなに地球上で大繁殖しているのでしょうが・・・。今回は犬猫の発情についてですが、犬猫の雄は基本的にいつでも交尾可能な状態で雌の発情に刺激されて発情しますので、雌の発情についてお話します。


【犬の発情期】

犬の発情は個体差も有りますが、生後6ヶ月ほど(人間に換算すると中高生ぐらいの年齢)から始まります。時期は大まかに言って、春と秋の年2回あります。しかし、最近では室内飼育の犬が増え、犬の季節感が無くなっている事がよくあります。また、高齢になると発情が1~2年に1回など不定期になる事もあります。発情期になると雌犬は普段と違う様子になります。普段は犬嫌いのワンちゃんも他のワンちゃんに近寄ったり、雄犬を受け入れるようになったりします。まさに、『本能が働いている』という感じです。飼い主が発情に気づくのは陰部からの出血(生理)でしょう。しかし、本当の発情(交配適期)は生理が終わってから起こりますので、出血が止まったから発情が終わったと思っていると交尾してしまうことがあります。また、交配をする場合は発情期に交尾しないと子供ができません。交配のタイミングは動物病院で簡単な検査で分かります。
生理は約1~2週間、その後の発情は約1週間程です。出血がだらだら1ヶ月も続く場合は子宮蓄膿症の可能性もあるので、動物病院で診察を受ける事をお勧めします。


【対策】

発情を抑えるには一般的には避妊手術を行います。おそらく獣医が一生の間に一番行う手術でしょう。手術時間は20~30分程で、成功率も当院の場合はほぼ100%ですが、血管の処理等を慎重に行う必要もあり、技術的には意外と難しいです。手術方法としては、お腹を開けて卵巣と子宮を取り出します(卵巣だけ取り出す獣医もいます)。妊娠や発情をしていると、血管が普段よりもかなり太くなっているので、その分出血のリスクが高くなります。子宮蓄膿症という子宮に膿が溜まる病気の手術も基本的には同じ方法ですが、パンパンに膿で腫れて、血管が怒張しまくった子宮を切除するのは、本当に気を使います。手術以外に発情を抑えるには、ホルモン剤を体に埋め込むという方法も有りますが、あまり一般的ではありません。おそらく、数年毎にホルモン剤を入れ替える必要があったり、子宮蓄膿症になりやすい等のデメリットが多いためだと思われます。また、若年期の卵巣切除が乳がんの発生を抑制するので、避妊手術を勧める獣医が多いのではないかと思います。


【猫の発情期】

猫の発情期も基本的に春と秋です。初回発情は大体生後6ヶ月以降です。発情期間は1~数週間です。また、1シーズンに数回発情を繰り返す事もあり、『終わったと思ったらまた始まった』何てことも良くあります。外で猫同士がケンカして『フギャー・ワニャー』などと叫んでいるのは、大抵発情がらみのケンカです。また、室内飼育でも雌猫が発情すると『フニャーオ・ワニャーオ』などと大声で鳴きます。きっと雄猫を求めて『外へ行かせろ~』と叫んでいるのだと思います。夜中も関係無く鳴き続けますので、広い家なら問題無いでしょうが、普通の家やマンション等ではかなり気になると思います。
猫は犬のような生理(出血)が無く、雄猫との交配の刺激で排卵します。また、受精率も犬に比べて高いので、交尾したら子供ができると考えた方が良いです。


【対策】

発情を抑えるには犬と同じで一般的には避妊手術を行います。手術方法も犬と同じです。猫は犬に比べて子宮蓄膿症になる確率は低いですが、若年期の卵巣切除が乳がんの発生を抑制する効果はあります。また、猫の乳がんは犬に比べて悪性度が高いので、避妊手術を勧める獣医が多いのではないかと思います。


全体的なまとめ

発情は生物として最も重要な生体反応ですが、繁殖をしない場合には必要のないものです。中高齢以降で病気になる確率が高くなるため、獣医師は早期の避妊手術を勧めています。しかし、避妊手術は決して簡単な手術でも安全な手術でもありません。私も勤務医時代には『避妊手術ができれば、他の手術は大体できる』と先輩獣医によく言われました。お腹の中の比較的奥に位置する卵巣を取り出し、比較的太い子宮の血管をしっかり処理しないといけません。よくインターネット等で『避妊手術は安全な手術』などと書いてあるのを見ますがウソです。手術自体に100%安全な手術などありませんし、リスクが0%ということはありえません。しっかりした技術を持った人が行うから無事に終わっているだけで、誰が行っても無事終わるわけではありません。また、生物には必ず例外というものがあり、想定外の事態が起こることがあります。その際に慌ててパニックになってしまうのか、冷静に対処できるのかも獣医の力量によるのです。プロとは想定外の事態が起こることも想定しておかないといけないのです。

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