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悪性腫瘍の早期発見をしよう!!

病気の知識





こんにちは。アニマル医療センター 桃ペットクリニックの院長の加藤です。
先日、当院は10周年を迎えることができました。開業2~3年間は書類の整理をする時間も無かったほど忙しかった記憶があります。優秀なスタッフにも恵まれたおかげか、10年間大きなトラブルも無く、立て看板で宣伝する必要も無く過ごせました。勤務医時代は嫌な仕事をやらされた事も多々ありましたが、最近はスタッフ達ががんばってくれているので、充実した獣医師ライフを過ごせています。開業当初にウイルス感染で死にかけた仔犬も、最近では白髪も増えてすっかりお年寄りになってしまいました。ペットは大体1年以内で大人になってしまうので、その後は老化していくだけです。本当にペットは老いるのが早いですね。そして、老化と共に多くなってくるのが『ガン=悪性腫瘍』です。今回は悪性腫瘍についてお話します。


【悪性腫瘍はこんな病気】

悪性腫瘍とは一般的には『ガン』といわれているものです。皆さんもご存知とは思いますが、人間の死亡原因の中でも高位の病気です。ペットでも悪性腫瘍はかなり多い病気です。腫瘍とは簡単に言えば『イボ』ですが、そのイボがどんどん大きくなったり、色々な臓器に入り込んだりして、正常な機能を奪ってしまうのが悪性腫瘍です。良性腫瘍は転移しなかったり、あまり大きくならないので、特に存在自体には問題はありません。悪性腫瘍も良性腫瘍のように今以上に大きくならなければ問題はないので、最近は悪性腫瘍を消滅させるより、今以上に大きくさせずに共存していくという考え方も出てきています。これは抗ガン剤等の使用でも低用量で成長を阻止すればいいので、悪性腫瘍を消滅させるほどの副作用が出にくいというメリットがあります。


【気をつけるべき悪性腫瘍】

飼い主が早期発見できるのは体表の腫瘍です。体表の腫瘍で圧倒的に多いのが『乳ガン』です。乳ガンは早期に治療すれば恐れる事はありませんが、適切に治療しないと転移したりして致命的になります。他にも体表の悪性腫瘍で肥満細胞腫や悪性リンパ腫等色々な種類の物があります。転移しやすい物や進行の早い物等、悪性腫瘍によってかなり性質が違います。
しかし、本当に気をつけないといけないのは、お腹の中にできる腫瘍です。お腹の中の腫瘍は血液検査では異常値を示さない事が多く、超音波検査やレントゲン検査でないと判らない事が多いです。症状が出てから悪性腫瘍が判った場合は、すでにかなり大きくなっていたり、転移していたり手遅れの事が非常に多いです。当院の例では脾臓や卵巣や消化管の悪性腫瘍が多いです。写真の腫瘍は膀胱と脾臓と腸管の悪性腫瘍ですが、定期検査で早期発見した物です。早期発見ならば手術で切除できます。



【対策】

悪性腫瘍が発生する理由は、はっきりとはわかっていませんが、ウイルス・化学物質・ホルモン分泌等が関係している物もあります。その中でもペットの悪性腫瘍の発生には、化学物質(発ガン性物質)が関係している物も多いと思われます。ペットフードの中には保存料や添加物が入っている物も多々あり、長期に摂取し続けると発ガンする物もあります。添加物に関しては人間の食べ物に比べ基準も低く、ほとんどノーチェックと言っても良いのが現状です。また、海外の製品では、船便等の輸入方法の悪い物ではカビが発生していたり、酸化が進んでいたりと消費期限内でも悪質な物もあります。これらを避けるには、信頼できる商品を購入するしかありません。人間の食材を使って手作り食を与えるのも、添加物という点からは非常に有効です。人間の食材でペットのご飯を作ると意外に費用が掛かる事に気づくと思います。すると、ペットフードがいかに安く作られているかに驚くことでしょう。
動物病院でできる対策は定期検査ですが、その中でもお腹の中の検査で有効なのは超音波検査です。麻酔も必要ないので手軽にでき、ペットにも苦痛を与えず小さな異変にも早く気づくことができます。ただ、注意しないといけないのは、血液検査ならば誰が採血しても機械が結果を出してくれるので検査の数値は同じですが、超音波検査は人間が判断しますので獣医師の力量が問われます。理想的なのは3ヶ月に1回以上の検査を受けること。成長の早い種類の悪性腫瘍にも対応できると思います。
治療としては、基本的には『手術』『抗ガン剤』『放射線療法』等ですが、最近では切除したガン細胞から『がんワクチン』を作り、免疫力を利用する治療法や、活性酸素やガン細胞が死滅する温度を利用した『温熱療法』等新しい治療法も出てきています。実際に当院でも『がんワクチン』や『温熱療法』で効果をあげています。


全体的なまとめ

ガンは早期発見・早期治療ができれば完治する事も可能な病気です。特に乳ガンは手術で切除すればほとんど再発はありませんし、他の皮膚のガンでも手術で切除すれば完治が可能な事も多いです。しかし、転院してきた例では手遅れだったり、中途半端な治療で転移しているケースもよく見かけます。また、ガンは治療しなければ100%大きくなったり、他の臓器に転移してしまいます。転移場所や大きさの状態によっては手術ができなくなってしまう事もあります。飼い主の中には、最初は『自然に任せる』と治療をしない人もいますが、痛みを感じて苦しむペットを見てしまうと、どうにかしたいと思う場合が多いです。診療していて感じるのは、『もっと早く小さな腫瘍のうちに治療していれば、こんな悪い状態にならなかったのに』という事です。病気は色々有りますが、治療しないでガンで死亡する場合はまさに『悲惨』という感じがします。人間がガンになった時に治療しないのは本人の自由ですが、ペットは治療に関しては選択権がないのですから、こじらせて、膿や体液でぐちゃぐちゃになって、悪臭を放ち、痛みを感じさせるようなことはしないであげて欲しいと思います。

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