子犬のしつけ メニュー

フィラリア感染症について

病気の知識





こんにちは。アニマル医療センター 桃ペットクリニックの院長の加藤です。大分暖かくなってきましたね。毎日色々なペットに接していると、ペットが何を言いたいのか分かるようになってきます。最初は自分でも不思議でしたが、最近TVで見た『警察24時間!!』みたいな番組で、普通に歩いているだけに見える人でも警察官には犯罪者が判るという内容を放送していました。『なんか、似てるな』と思っていたところ、私がいつもお世話になっている車の修理屋さんが『ネジを締める時はネジと話をする』と言っていました。熟練してくると微妙な変化から一般人には分からない情報を読み取る事ができるようになるのですね。人間には五感以外にも何か別の能力があるのでしょうか?今回は不思議な力のない人でも簡単に予防できる『フィラリア感染症』についてのお話です。ただし、感染したら大変な事になりますので要注意!!


【フィラリア感染症とは】

フィラリア感染症とは、フィラリアに寄生された蚊が動物の血を吸う際に動物の体内に移動して、心臓や血管の中で成長し20~30センチ程の大きさの虫になり、様々な病気を引き起こす寄生虫感染症です。手術で取り出した虫を見るとまるで『そうめん』です。心臓や血管の中で大人になった虫達は血流の邪魔をして心臓や肝臓や肺に障害を引き起こしたり、血管の中を移動している時に変な場所に詰まって動物を急死させたりします。動物が死んでしまえば自分も死んでしまうのに、なんとも間抜けな話です。
大人になった虫達は人間と同じように子供を産み子孫繁栄に勤めます。産まれた子供達は動物が蚊に血を吸われる際に蚊の体内に移動し、違う動物へ蚊が運んでくれるのを待ちます。自分で移動せずに蚊に運んでもらい、次から次へと感染を繰り返しフィラリアの勢力を拡げていくのです。生活保護を不正受給している人達の様に『こずるい』というか『ずる賢い』というか正に寄生虫です。日本で飼育されているペットでは、主に犬・猫・フェレット等が感染予防の対象となります。


【症状】

症状としては、基本的には心不全です。進行はゆっくりで、感染後数年かけて症状が出てきます。咳が出たり、お腹に水が溜まる腹水や全身が痩せてガリガリになったりします。心臓内部で虫が詰まると急性症状として血尿や呼吸困難等を起こし死亡する事も有ります。その他、心不全から肝臓・腎臓・肺等に障害を引き起こします。猫は一見無症状で進行する事が多いですが、発症すると呼吸困難等を起こし急速に進行してしまいます。犬よりたちが悪いとも言えます。


【対策】

対策は非常に簡単で、1ヶ月に1回薬を投与するだけです。皮膚にたらすタイプの薬・おやつのようなタイプの薬・飲み薬等色々あります。当院では基本的に飲み薬かおやつタイプの薬をお勧めしていますが、副作用はほぼゼロと言って良いです。投与後数ヶ月効果のある注射剤もありますが、副作用で死亡例もあるので当院では行っていません。
前述のようにフィラリアは蚊が運んでくる虫なので、蚊が多くなる4~11月頃に予防をする場合が多いです。家の周りの環境や地域によって冬場でも蚊がいる可能性がある場合は、1年中予防薬を投与します。現在の予防薬には消化管の寄生虫も駆除する成分が入っている物があるので、散歩の際に他の犬の便から消化管内寄生虫を拾うのを予防する意味も兼ねて、1年中予防薬を投与している飼い主もいます。
日頃の診察時に『蚊取り線香をたいているから大丈夫』という飼い主がいますが、蚊取り線香で100%蚊を防げるのか疑問に思います。押し売りみたいに思われるのも嫌なので『あ~そうですか』としか言いません。蚊取り線香代を予防薬代に当てた方がよっぽど賢いと思うのは私だけでしょうか?でも、実際に蚊に100%刺されないようにできればフィラリアには感染しません。
フィラリアに感染してしまった場合は、手術で心臓から虫を取り出すか、薬で虫を駆除する方法が有りますが、どちらもリスクが高いので軽度感染の場合は当院では今以上にフィラリアを増やさないようにする方法をお勧めしています。フィラリアにも寿命がありますので、きちんと管理すれば死滅させる事ができます。


全体的なまとめ

フィラリア感染症の予防は『薬を定期的に投与するだけ』と非常に簡単です。しかし、感染後の駆除はいずれの方法も非常にリスクが高く、予防の簡単さとは比較になりません。獣医さんはフィラリアに感染してしまった犬が、ガリガリに痩せお腹だけがポッコリと膨らみ咳き込んで辛そうな姿を実際に見ているので、予防を勧めているのだと思います。ペットは飼い主を選べませんから、予防をしてもらえなかったペットは運が悪かったとしか言いようがありません。当院のような街中にある病院でも、年に数例はフィラリアに感染している犬が見つかります。その犬からは蚊が次々にフィラリアを運んで、新たな感染動物を作り出しているのです。フィラリア感染症は無数にある病気の中で、予防できる数少ない病気の一つです。100%予防できる病気なのに、予防してもらえず感染してしまった子たち。それでも飼い主に寄り添うペットは本当に哀れでかわいそうに思えます。

ペットのことからおうちのことまで住マイルワンにおまかせペットのことからおうちのことまで住マイルワンにおまかせ